今から約370年前の江戸時代初期、京都で色絵陶器の完成者と
して世に名を残した不世出の陶工、仁清は茶人の金森宗和にその
才能を見いだされ、御室の門跡寺院、仁和寺の知遇を得て門前に
窯を開き作陶しました。名は野々村清兵衛といい、「仁清」という
のは号で仁和寺から「仁」の字を賜り、名の頭字の「清」を合わせた
ものです。作品は茶壺、水指、香炉、香合などの茶器や懐石道具
が主でそれらは秀でた轆轤技、赤・黒・緑・青・黄などに金銀を
加えた見事な絵付、独特で斬新な意匠によって、絢爛華麗な極め
て日本人的な美しさを表現しています。仁清は四季草花や鳥・人物
など様々な主題を作品に取り入れていますが、その中には百人一首
や源氏物語など和歌や古典文学を題材にしたものも制作しており、
仁清が古典文学に大変造詣が深かったことを物語っています。
そこで今回の展覧会では、所蔵する源氏物語印籠、百人一首印籠
などの作品をその歌の解釈と合わせてご覧いただきます。また、それ
までは窯を区別する目的で使用されていた印を陶工や作者を識別する
ために使い始めた最初の人とされる仁清の印とともに「清兵衛」の銘が
刻まれた底裏なども公開いたします。その他、江戸時代に活躍した
本阿弥光悦や尾形光琳・乾山などのそれまでの伝統や様式にとらわれ
ない発想によって革新的な作品を生み出した作家たちの作品も展示
いたします。