野々村仁清は丹波国桑田郡野々村、現在の京都府南丹市美山町の出身といわれ、通称は清兵衛、或いは清右衛門と諸説あります。瀬戸で轆轤の修業を積み、正保年間に洛西の仁和寺門前に御室窯を開きました。
「仁清」という号は仁和寺から賜った「仁」と自分の「清」を合わせたもので、その作品の多くに印が捺されています。それまでの印は単に窯を区別するため捺されていたにすぎませんでしたが、仁清は陶工や作者を識別するため、すなわち自分の作品であることを主張する目的で使った最初の陶工と言われています。
公家階層の手厚い保護のもと、従来の中国や朝鮮の模倣から脱して、純日本風の優雅で美しい趣の色絵京焼を完成した仁清は、漆黒の地色や金・銀を使ったデザインなどを取り入れ、それまでとは全く異なる極めて装飾性の高い新しい焼物を作り出しました。仁清は顔料の組成などを文献に残しており、現在の科学系の顔料が使用されるまでは、焼物の世界ではそれが使われてきました。しかし、多くの作品を残しているにもかかわらず、自身に関する資料はほとんど残存せず、生没年等多くの点が謎とされ、幻の芸術家と呼ばれています。
百河豚美術館のコレクションの中核をなす仁清作品は他では見ることが出来ない質と量を誇る一大コレクションです。今回の企画展では、卓越した轆轤技と極めて独創的な意匠が素晴らしい野々村仁清の作品の中から茶壺、香炉、風炉、水指、茶碗など茶道具の他、古典文学を題材にした印籠や皿など前期と後期に分けて展示します。 |