私たちが暮らす日本には移り変わる四季があり、春夏秋冬それぞれ
の季節には自然の織り成す豊かな色彩美があります。このような気候
風土の中で日本人には美に対する独自の感性が養われてきました。
日本の芸術文化は主に大陸から伝わりましたが、それらを受け入れた
後、少しずつ日本様式に変化させ、結果的には他の国には見ることの
できない日本独自の芸術や文化を形成していったのです。特に色彩美
に対する感性は世界のどの国よりも繊細といえるでしょう。桜色・鶯
色・空色といった植物や鳥、自然を由来とした400色近い日本の伝
統色である和色からもそれが伺えます。
今年度の企画展は、そんな色に着目し、所蔵作品の中から色彩あふ
れるいろどりの部と単色美のモノトーンの部にわけて公開します。
いろどりの部では没後300年を迎えた琳派の始祖である尾形光琳や
色絵京焼を完成させた野々村仁清などの作品を中心に、モノトーンの
部では墨の濃淡が美しい水墨画や力強い書、絵付を施さず釉薬のみで
仕上げられた焼物など、対極の世界をお楽しみ下さい。